三菱商事のシンガポール連結子会社!原油デリバティブで約345億円の巨額損失! [崩壊迫る中国!CHINAリスクを検証する!]
20日三菱商事は、原油・石油製品トレーディング会社である同社子会社のPetro-Diamond Singapore (Pte) Ltd.(以下、PDS)が行っていた原油デリバティブ取引において、総額約320百万米ドル(約345億円)の損失が発生する見込みである事を公表しました。
既に対象となるデリバティブ取引については手仕舞い、損失を確定しているそうですが、その他関連取引等を含めた損失の最終確定額を精査していると言っています。
損失発生の経緯は、PDSが行っていた中国向け原油取引において、本取引を担当していた元現地プロパー社員(中国籍 以下、当該社員)が社内規程に違反し、中国向け原油取引に関連したヘッジ取引と偽って、本年1月よりデリバティブ取引を繰り返していました。
デリバティブ取引で発生した損失については、PDSのリスク管理システム上のデータを変更することにより、顧客との取引に関連したヘッジ取引であるかのように装い、PDSにおける損失が社内で認識出来なくなる操作を繰り返していました。
7月以降の原油価格下落局面において、デリバティブ取引損失が拡大した結果、今回の大きな損失に繋がったものです。
8月中旬になり、当該社員が欠勤したことを受け、当該社員が担当していた原油取引やデリバティブ取引を精査したところ、上記のことが判明致しました。
この三菱商事の説明を分かり易くするためにチャートを使って説明しまと次の様になります。
このチャートは上記デリバティブ取引の様子を分かり説明する為に原油価格の推移を1ヶ月足で描いてみました。
損失を出した中国籍の社員は、5月から6月にかけて原油価格が大きく下落し底を打ったところで、ホルムズ海峡で日本のタンカーが砲撃されると言う事件が起きて原油価格は急騰します。
この動きに提灯乗りして大儲けしようとしてオプション取引のプットオプションで今年の5月に付けていた頃の高値で売る権利を買ったと思われます。
しかし、その後7月以降になると原油価格は下落しプットオプションを行使できない所か損失が膨らむばかりで満期が近づきます。
満期が何時に設定されていたかはこの内容からは分かりませんが、これ程損失が膨らむと追加証拠金が必要になりますので、それが来る前に中国籍の社員は会社に来なくなったと思われます。
その後PDSに追加証拠金を求める請求が来て事件が発覚したと見られます。
デリバティブ取引でもプットオプションの売りは極めて危険で、目論見が当たれば大儲けできますが、損失が出ると巨額な損失が出る可能性が高いのです。
分かり易きく説明しますと保険と同じで、事故や災害等で将来の損失の予防として保険料を支払いますと、その後事故で10億円の損害が出ますと保険会社が保険料を支払ってくれるので被保険者は損失リスクがヘッジされます。
しかし、この逆にPDSの中国籍の社員は保険料を貰う筈が多額の損失の支払いをさせられる結果になったのです。
この中国籍の社員はこうした取引の専門家でもなさそうでホルムズ海峡で日本のタンカーが砲撃されると言う事件が意図的に仕組まれた事件である事を見抜いていませんでした。
この事は私の当ブログ6月17日の戦争はこうして作られる!ホルムズ海峡のタンカーが砲撃が機雷にすり替わる報道の実態で書いていますが本物のトレーダーならこうして物事の真相を先ず探るものです。
相場の世界は心理戦ですから、常に大衆の心理を動揺させるニュースや事件、事故が意図的に作り出されますのでそれに惑わされる様な人は相場には不向きで、皆が同じ方向に動いた時こそリスクを取って逆の動きをするものです。
三菱商事がデリバティブ取引については手仕舞い、損失を確定していると言っているのはロスカットしてこれ以上損失を拡大させない為の懸命な措置です。
更に、三菱商事は「当該社員による社内規程違反が判明した為、PDSとして9月18日付で解雇致しました。また、当該社員が重大な社内規程違反・法令違反を犯し、会社に多大なる損害を与えたことに対し、断固たる対応を取るべく、当該社員をPDSとして9月19日付で刑事告訴しております。」と述べています。
ちなみに、Petro-Diamond Singapore (Pte) Ltd. (PDS) 社概要は次の通りです。
所在地 :1 Temasek Avenue #17-01 Millenia Tower, Singapore 039192
代表者 :山縣 英之
設立 :1989年5月
資本金 :2百万シンガポールドル
株主 :三菱商事株式会社(全額出資)
事業内容 :シンガポールを拠点とした原油/石油製品のトレーディング
恐らく三菱商事はPDSの資本金の160倍と言う損失の大きさからこの会社を消滅処分すると思われます。
また、シンガポールはこうした取引に対する課税はありません、つまりタックスヘイブンで税金を払わないグローバル企業の実態が見えますし、これが逆に税金以上の損失を支払わされているのかも知れません。
まだ疑問が残る点は、プットオプションの相手方は多額の利益を受ける筈ですから、仮に多額損失を出した中国籍の社員と関係があれば、示し合わせて不正な取引を行った可能性は否定できません。
最近の一般の企業もグローバル化化しており日本人とモラルの違いがある現地社員の教育や管理の仕方も注意しなけらばならなくなりそうです。
中国籍の社員は今年の1月頃からデリバティブ取引を繰り返していたそうですから、1月から4月まで続いた原油価格の値上がりで当初は儲けたかも知れませんが5月には下落しそこでも損をして、その損を取り戻そうとした可能性があります。
損を取り戻そうとすればする程冷静さが失われ張る金額とリスクが増えるもので、結果的に巨額損失となるものです。
金融市場と言うものは基本的に冷静な判断が瞬時に出来ないと無理ですし、デリバティブはルールで雁字搦めのマネーゲームですからやばくなっても瞬時に抜けられない怖さがあります。